車を持つ予定なんて、1ミリもなかった。
元々都内に住んでいたこともあり、移動はぜんぶ電車。どこに行くにも困らないし、維持費もかからない。「車って、必要な人が持つものでしょ」くらいの感覚だった。
それが今、週末になるとまず考えるのは「車でどこ行く?」になっている。きっかけは柴犬のえいちゃんを茨城のブリーダーから迎えるため。夫婦ともにペーパードライバー状態から再開して、気づけばキャンプ、ゴルフ、犬連れ旅行、ドッグラン。「いらない」と思っていたものが、暮らしを一番変えた。
なぜか駐車場付きの家を買っていた
家を買うとき、間取りや立地は散々悩んだ。でも駐車場については何も考えていなかった。
たまたま気に入った物件に駐車場がついていた。ただそれだけ。
がく「駐車場あるけど、使わないかもね」
はるさん「まあ、あって困るもんじゃないし」
この会話をしたときは、まさかその駐車場がフル稼働する未来が来るとは思っていなかった。
ちなみに引っ越してからしばらく、その駐車場はただの空きスペースだった。「もしかしたら別の用途でも使うかもねー」とは言っていたけど、何も思いつかなかった。
人生、どこで何がつながるかわからない。
えいちゃんを迎えに行くための一台
車を買った理由は、実はとてもシンプル。
きっかけは、えいちゃん(うちの柴犬)だった。茨城のブリーダーさんのもとで生まれた彼を迎えに行くには、どうしても車が必要だった。電車で何回も乗り換えて、慣れない子犬を運ぶなんて、想像しただけで夫婦そろって白目をむいた。
「じゃあ、中古で一台買うか」。
そんな軽いノリで車を手にした。新車なんて贅沢は言わない。走ればいい。走ってくれればそれでいい。中古だから多少ぶつけても精神的ダメージが少ない。ペーパードライバーにはむしろ最適解だった。
ただ、問題がひとつ。僕は何年も運転していなかった。免許は持っている。持っているだけ。都内の電車生活に慣れきった人間にとって、車の運転はもはや「前世の記憶」に近い。
納車の日、駐車場から出すだけで手が震えた。ミラーの角度がわからない。ウインカーのタイミングがわからない。何なら右折が怖い。
はるさん「……大丈夫?」
がく「大丈夫じゃない」
助手席のはるさんの顔が引きつっていた。あの表情は今でも忘れられない。
ちなみにはるさんも免許は持っている。地元では運転していたらしく、広い道なら走れるらしい。ただ駐車場に止められないらしい。地元でどうしてたんだよ、と思っている。つまり「まともに運転できない勢」の夫婦が中古車を買ったわけだ。冷静に考えるとなかなかの冒険だった。
えいちゃんの迎えは無事に成功した。帰りの車内で後部座席のキャリーからクンクン鳴く声が聞こえてきたとき、「車、買ってよかったな」と初めて思った。
車がなければ出会えなかった趣味たち
えいちゃんを迎えてからが、本当の始まりだった。
車があると「ちょっと遠いけど行ってみるか」のハードルが一気に下がる。えいちゃんと一緒に新横浜の人気ドッグランに行ったり、ペットOKの宿に泊まったり。電車では絶対に行かなかった場所に、気軽に足を伸ばすようになった。
最初はえいちゃん中心のお出かけだった。それがいつの間にか「車があるなら、あれもできるんじゃない?」に変わっていく。
そして気づけば、キャンプにハマった。
荷物が多いキャンプは車がないと始まらない。テント、タープ、チェア、テーブル、クーラーボックス。後部座席を倒して荷物を詰め込む週末が定番になった。えいちゃんも一緒に行けるから、預け先を探す必要もない。自然の中で焚き火を眺めながら、隣でえいちゃんが寝ている。あの時間は何にも代えがたい。
さらに、はるさんに教わって始めたゴルフも車のおかげで加速した。ゴルフバッグを担いで電車に乗る気にはならないけど、車なら玄関からコースまでドアtoドア。朝5時に出発して、早朝ラウンドして、昼には帰ってくる。
そこからえいちゃんの散歩に行って、夕方は二人でだらだらする。そんな「なんもない」はずの休日が、車のおかげで選択肢だらけになった。
がく「来週キャンプ行かない?」
はるさん「先週も行ったじゃん」
「車いらない」と言っていた人間が、毎週のように車を出している。変われば変わるものだ。
振り返ると、車がなかったら今の趣味のほとんどは始まっていなかったと思う。キャンプもゴルフも、えいちゃんとの旅行も。「移動手段」のつもりで買ったものが、いつの間にか「二人の自由な時間」を広げる装置になっていた。
まとめ:「いらない」と思ってたものが、暮らしを変えることもある
- 都内の電車生活が当たり前で、車を持つ発想がなかった
- えいちゃんを迎えに行くために中古車を購入。数年ぶりの運転は恐怖だった
- キャンプ、ゴルフ、旅行——車があることで趣味の幅が一気に広がった
- 今では車のない生活が考えられないくらい、暮らしの中心になっている
「なくても困らない」と思っていたものが、実は一番生活を変えるアイテムだったりする。
駐車場付きの家を選んだあの日の自分に、ちょっとだけ感謝している。

